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額関節症について |
他人には、同情されにくい病気です。 |
あごが鳴る、口が大きく開かない、あごが痛む・・・は顎関節症(がくかんせつしょう)の三大症状。 若い女性に急増中と言われる顎関節症ですが、自然に治る軽症のものから、仕事はおろか日常生活さえままならない深刻な症状に苦しめられる重症の患者さんもいます。 原因は何なのか? いったいなぜ増えているのか? 実は生活習慣や、姿勢や食べ物など、人間の体全体を見直すことが必要であるという警鐘が含まれている現象なのかもしれません。 顎関節症について、症状や原因、治療法等についてまとめてみました。 「まずは概要をザックリとつかみたいんだ!」そんなときに読んでください。
顎関節症のタイプや原因について理解しやすいように、顎関節の構造と働きについて簡単にみておきましょう。
■顎関節の構造
顎関節は左右に一つずつあり、頭の骨のくぼみに、下顎の骨の突き出た部分がはまり込むような構造になっています。顎を動かしたときによく動く両耳の前の部分が顎関節です。
頭の骨(側頭骨)のくぼみは、耳のすぐ前あたりにある下顎窩(かがくか)というへこみとその前にある関節隆起という出っ張りから成っています。そのくぼみに下顎の骨のつき出た部分、下顎頭(かがくとう)がはまり込んでいます。 下顎窩と下顎頭の間には関節円板というクッションの役目をする組織があり、骨同士が直接こすれ合わないようになっています。
関節円板はコラーゲンという膠原繊維でできている野球帽のつばを狭くしたような帯状のもので、その端は下顎頭の内と外に連結されていますが、前後にはあまり強く連結されていません。 下顎窩のくぼみと下顎頭の間にはさまれるように位置し、顎の動きにつれて下顎頭の内と外の連結部分を軸にして前後に回転し、下顎頭の先と一緒に動いて口の開閉時の圧力を吸収しスムーズに動けるようにする働きをしています。
これらの関節組織は関節包という線維性の膜に取り巻かれており、関節包の内面には滑膜から滑液が分泌されて いて、潤滑油の働きをするとともに関節円板や骨の表面の線維軟骨に栄養を運んでいます。 関節包の外側には外側靱帯があり、上下の骨を連結しています。
■顎を動かす筋肉
・開口筋 口を開けるのに使う筋肉。首の前(顎の下)にある前頸筋(舌骨上筋、舌骨下筋、胸鎖乳突筋) ・閉口筋(咀嚼筋) 食べ物を噛むのに使う筋肉。咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋 ・頸筋 食べ物を食いちぎったり、しっかりとらえるために使う筋肉。前頸筋(舌骨上筋、舌骨下筋、胸鎖乳突筋)、後頸筋(僧帽筋など)
■顎関節のうごき
<口を開けるとき>
口を開けようとすると、下顎頭は回転し下顎窩から外れて前に滑り出す。関節円板も下顎頭の上に乗って一緒に前に移動する ※下顎頭が下顎窩から外れて前に移動することにより口を大きく開けることができる
<口を閉めるとき>
下顎頭は後ろに移動し、下顎窩の中に収まる。関節円板も一緒に後ろに移動して元の位置に戻る
<食べ物を咀嚼するとき>
下顎を左右に動かす必要があるため、左右のどちらか一方だけ下顎頭が前にすべり出し、この連続で食べ物を噛む。
■関節円板はズレやすい
関節円板は前後の連結がゆるやかになっているため、前後に動きやすく、関節円板の後部組織が伸びやすい構造になっています。関節円板が前後に動いているうちに後部組織が伸びてしまい、関節円板が前方にずれたままになってしまうと、口を開け閉めするときに「カクカク」音がしたり、口が開けずらくなる症状が出てきます。 顎関節症の原因
■噛み合わせだけが原因ではない
かつては顎関節症の原因は噛み合わせの異常にあると言われていましたが、現在では顎関節症の原因となる因子はいくつかあり、それらが積み重なってある耐久限界を超えたときに発症する・・・と言われています。 但しなりにくい人なりやすい人がいて耐久限界にも個人差がありますので、くいしばりや歯ぎしり偏咀嚼などの生活習慣の中の要因の積み重ねが“その人の”耐久限界を超えたときに発症する、ということになるでしょうか。
■顎関節症の様々な原因
1)ブラキシズム
「くいしばり」「歯ぎしり」「歯をカチカチならす」などのことをブラキシズムといい、筋肉を緊張させて顎関節に過度の負担をかけダメージを与える。最も大きな原因と言われてます。 くいしばり・・・肉体労働や仕事などに集中しているとき無意識に行っている。就寝中にも起こる。 歯ぎしり・・・音のしない歯ぎしりもある
2)ストレス
仕事や家庭、人間関係などのストレス、その他精神的な緊張は、筋肉を緊張させてくいしばりを起したり夜間の歯ぎしりを起したりと、ブラキシズムに影響します。
3)偏咀嚼
左右どちらか一方でばかり噛む癖を偏咀嚼といい、片側だけに多くの負担をかけることになり、発症の原因になります。
4)顎や筋肉に負担をかける癖や習慣
うつ伏せ寝、頬杖をつく癖、あごの下に電話をはさむ、猫背の姿勢など
5)悪い噛み合わせ
噛みあわせについては様々論議があり、現在では多くの原因の中の一つと考えられ、偏咀嚼やブラキシズムの原因として関連していると言われています。 (不良な歯列矯正や歯科治療により噛みあわせの悪さを招くこともある)
6)その他
歯の治療などで大きく口を開けた、顎や頸部頭などを強く打って顎関節や靱帯を損傷した など
◇顎関節症を誘発するきっかけは色々 日常の様々なことがきっかけとなって顎関節症を誘発します。 ○何かに熱中したり緊張して強く食いしばる ・会社で導入したてのパソコンを覚えようと熱中して ・長い会議のあった日は夕方から口が開けづらくなる ・休日に一日テニスをしたあとは顎がカクカク鳴る ・何か特別な行事があると緊張して食いしばる ○オフィスの冷房がキツクて歯を食いしばる ○仕事で悪い姿勢を長時間続けていた ○仕事のストレスで夜よく眠れない ○片側の歯が悪いため反対の歯だけで食べ物を噛む癖がある など
■現代人は顎が退化している?
同じ顎関節症の原因となる生活習慣を行っていても顎関節症になりやすい人となりにくい人がいます。 また近年に顎関節症は増加しており、それも若い女性など若年層に増えています。 これには最近の柔らかい食べ物の多い食生活から「噛む力」が弱くなっていることが関係しているのではないかと言われています。 伝統的な日本食に比べ、ハンバーグやスパゲティといった現代人の好む食事は噛む力も噛む回数も少なくてすむので、顎が運動不足になり筋肉が衰えてしまっているのです。 そのため顎関節の動きをしっかり支えられることができず、顎関節症を発症しやすい素地を作ってしまっているわけです。 顎の退化は顎だけの問題にはとどまりません。顎の運動不足では脳への血流量も少なくなり集中力も落ち、顎が弱いときちんと噛みしめることができないので力が出ないし平衡感覚も低下、身体能力に大きく影響するのです。 また子供の頃からこういった生活習慣を続けるということは骨格や筋肉の発達にも影響があると思われます。 顎を退化させないよう生活習慣を見直すことこそが必要なのかもしれません。
◇子供の顎関節症◇ 子供が顎関節症を訴えるケースも増えています。原因は大人と同様ですが、学校生活、受験勉強、友人関係、親子関係など、最近では子供も大人さながらにストレスを受けているということにも関係があるのではないかと言われています。 顎の退化という問題もやはり背景となっていると思われ、子供のひどい虫歯は減ってきているそうですが噛みあわせの異常で歯科を訪れる子供は増えているという話も聞きます。例えば母乳で育った子供には悪い噛みあわせが少なく顎関節症の発症率が低いという説も。母乳を飲むためにはある程度強く吸う必要があるので顎や筋肉の発達によいのではないか、ということだそうです。 また悪い姿勢が顎関節症の原因になることもあります。外遊びの機会が減り基礎体力の落ちた姿勢の悪い子供が増えてきていることはとても気になるところです。 成長期にある子供にこそ、顎をしっかり使う食事で顎を鍛える、適度な運動を行い姿勢を正しくする、規則正しい生活をして過度なストレスにさらさない、といった基本的なことに注意してあげたいものです。 顎の関節が痛んだり口が開けづらいなどの症状があった場合、まずは自分で顎に負担をかけないなど注意をして過ごしてみましょう。しかし数日たっても治らないような場合は病院で診察を受けましょう。
■何科にいけばいいの?
顎関節症の場合、歯科での治療が一般的。顎だけでなく耳や顔に痛みが出るので耳鼻科や整形外科などにかかったとしても、顎関節症の疑いがある場合は歯科の受診をすすめてくれるようです。 治療をしばらく続けても症状が改善しない、悪化する、といったような場合は、さらに専門医を紹介してもらうのがよいでしょう。 顎関節症以外の他の病気やケガなどで並行して病院にかかる場合は、問題がおきないようにそれぞれの医師に治療の内容を伝える必要があります。例えば虫歯の治療など口を大きく開けての長時間の治療で症状が悪化する場合がありますし、むち打ち症で頸椎牽引をすると顎関節を痛めることも、また全身麻酔の手術の際の気管へのチューブ挿入や出産など、注意が必要なことがあるからです。
■検査
次のような検査を行い、よく似た症状の病気と識別するなどして診断されます。
1)問診・視診・触診
問診で診断がつく場合も多く重要。 ・現在の健康状態、既往歴、アレルギーの有無、常用薬物、関節や筋肉の状態など ・どんな症状があるのか 痛みの部位、どんな痛みか、持続時間、開口状態、雑音 ・どんなときに症状が出るか ・生活習慣 食いしばりや歯ぎしり、偏咀嚼はあるか、頭痛や肩こり、寝つきはよいか、ストレスはあるか
2)視診
・正しい姿勢をしているか 猫背などではないか ・顔貌は左右対称か 咬筋肥大はないか ・歯の磨耗、頬粘膜や舌に歯の圧痕はないか、かみあわせの異常はないか
3)触診
患者に触って、顔や首・肩などの筋肉の緊張や圧痛の状態、顎関節の圧痛・動き・雑音などを調べる
4)開口量の検査
開口量、顎が前方や側方に動くか などを調べる
5)画像診断
X線で関節の変形などを調べる 場合によってはMRI、関節腔造影検査 などを行って関節障害などを調べる
6)その他
必要に応じて次のような検査が行われる場合もある ・筋電図検査 ・関節鏡視検査 ・顎運動検査 ・咬合力検査 ・心理状態や性格を調べる検査
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